今月の表紙
唾液腺良性腫瘍の細胞診
荒井 祐司
1
,
都竹 正文
1
,
坂本 穆彦
2
1癌研究会附属病院細胞診断部
2東京大学医学部病理学教室
pp.472
発行日 1995年6月1日
Published Date 1995/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902410
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- 文献概要
ヒトの唾液腺は大唾液腺と小唾液腺に大別される.前者には耳下腺,顎下腺および舌下腺が属し,後者には舌,口唇,口蓋,口腔底などの口腔内に存在する小型の分泌腺が属している.成人の耳下腺は漿液腺の単一腺である.また,顎下腺および舌下腺は漿液腺と粘液腺の混合腺で,顎下腺は漿液細胞(約80%)が多く,舌下腺は粘液細胞(約60%)を主体としている.小唾液腺では口蓋および舌底腺のみが粘液腺の単一腺でほかは混合腺である.組織学的に腺房細胞の周囲および導管上皮とその基底膜の間には分泌の調整を行うと考えられている筋上皮細胞が存在するが,その分布は導管では介在部導管に最も多く,線条部導管になるに従って減少している.この筋上皮細胞は唾液腺腫瘍の発生を考えるうえで極めて重要である.唾液腺腫瘍の多くは耳下腺から発生し,次いで口腔小唾液腺,顎下腺の順で発生しやすい.舌下腺原発の腫瘍の頻度は極めて低い.唾液腺腫瘍は上皮性由来の良性・低悪性・悪性腫瘍,非上皮性由来の良性・悪性腫瘍に分類される.成人耳下腺の良性・低悪性・悪性腫瘍の発生頻度は,良性腫瘍では多形腺腫が約70%を占めており,次に腺リンパ腫,単一型腺腫の順である.好酸(性)腺腫は1%未満と少なくまれな腫瘍である.低悪性・悪性腫瘍では,粘表皮癌,未分化癌,多形腺腫由来癌が多く,次に腺様嚢胞癌,扁平上皮癌の順で,腺癌,腺房細胞癌は約1〜2%である.
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