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はじめに
腎の悪性腫瘍における超音波診断の位置づけは,健康診断などにおける腎腫瘍のスクリーニング,さらに腎癌のstagingにある.外来診療において,ベッドサイドに超音波検査機器が常備されるようになり,また,健康診断,人間ドックで超音波画像診断が一般化されてきたことにより,小さな腎細胞癌が発見される機会が増加している.
小さな腎細胞癌がスクリーニングされる頻度が高くなることは,転移や局所進展のない早期癌が発見される頻度が高くなったと言い換えることができる.転移を有する症例,局所進展症例の治療成績が不良であり,手術療法以外に有効な治療手段がない腎細胞癌において,早期に腎細胞癌を発見する意義は非常に大きく,日常施行されることが多い超音波診断の役割は重要である.
また,早期に発見される腫瘍が増加してきたことにより,従来の腎細胞癌に対する標準術式に加えて,腎機能温存を目的とした腎部分切除術が行われるケースが増加している1).腎門部や腎洞部に隣接する腫瘍については困難であるが,腎皮質から外方へ突出する腫瘍についてはよい適応となる.腎癌の治療の大原則は外科的切除にある現状で,いかに早期に腎癌を発見しえるか,また,良性腫瘍を鑑別しえるかが,超音波診断に課せられた課題である.
近年,超音波画像診断装置の進歩はめざましく,tissue harmonic imaging(THI)の導入により,Bモード像の画質は著しく向上した.また,画像データのデジタル化と画像処理技術との進歩により,二次元画像から走査終了時にほぼリアルタイムに三次元画像の再構築が可能となった.さらに,経静脈性投与超音波造影剤が1999年に市販され,腎疾患の診断に際しても臨床応用されている.次々と診断技術が開発され,超音波診断装置のデジタル化により,超音波画像の再現性と客観性とが保証されるようになり,検査の簡便性と相まって,ますます腎領域における超音波診断の有用性は高まることが期待できる.
本書では,腎腫瘍のうち悪性疾患である腎細胞癌の診断にスポットライトを当て,従来のBモードをはじめ,カラードプラ,パワードプラ,さらに近年普及してきている造影剤を用いた超音波診断について概説する.
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