連載 臨床医からの質問に答える
酵素アノマリーのコメントについて質問された
渡邊 弘子
1
,
前川 真人
2
1浜松医科大学附属病院検査部
2浜松医科大学臨床検査医学
pp.150-153
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100348
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背 景
電気泳動法によるアイソザイム分析において,分画の欠損,異常分画の出現,テーリングの出現など通常では観察されないアイソザイムパターンを酵素アノマリーと呼んでいる.アノマリーには酵素と他の物質との結合,遺伝性変異,腫瘍産生酵素などがあるが,本稿では酵素-免疫グロブリン複合体に焦点を合わせて説明する.
アノマリーの原因として頻度的に最も多いのは酵素-免疫グロブリン複合体で,電気泳動が行われているほとんどすべての酵素に存在する.免疫グロブリンが酵素活性に関係のない部位に結合すると,酵素の生物学的半減期が免疫グロブリンの半減期と同様に長くなるなど,酵素の代謝がなんらかの理由で遅延するために血液中の酵素活性が高値となる.失活因子の大部分も免疫グロブリンで,活性の発現部位への結合によって酵素活性を阻害すると考えられている.したがって,臨床像と合致しない酵素活性の異常から,電気泳動によるアイソザイム分析を行って発見されることが多い.CK(creatin kinase,クレアチンキナーゼ)では免疫阻害法を用いたCK-MB活性値の異常が発端となることもある.酵素-免疫グロブリン複合体の同定法には酵素免疫電気泳動法,免疫固定法,免疫混合法,免疫電気向流法などがある1).
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