特集 リポ蛋白・脂質代謝と臨床検査
11 後天性脂質代謝異常
9.妊娠
大森 安恵
1
,
秋久 理眞
1
Yasue OMORI
1
,
Rima AKIHISA
1
1東京女子医科大学糖尿病センター
pp.1586-1591
発行日 1985年11月1日
Published Date 1985/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917587
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はじめに
妊娠は,わずか40週の期間に受精卵から3kgの胎児が成長するという驚くべき偉業を成し遂げる.この間にみられる最も大きな変化は胎盤ができ,それが内分泌を主にした一つの臓器として働くこと,種々なホルモンが著しく増加すること,糖代謝および脂質代謝が亢進すること,などである.これらの変化はすべて,胎児を成長させるために相互に干渉し合って起こるものであるが,高脂血症は栄養学的にその主役を演じているといえる.
妊娠時に高脂血症のみられる事実については,すでに1847年にVirchowが妊娠後期妊婦の血清がミルク様に白濁することを観察し,これが脂肪に由来したものであることを証明したといわれている1).妊娠時に起きる高脂質血症を理解するには,その背景となる妊娠中に起きる母体の変化について知らねばならない.
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