特集 リポ蛋白・脂質代謝と臨床検査
11 後天性脂質代謝異常
8.皮膚疾患
松尾 聿朗
1
,
大城戸 宗男
1
Itsuro MATSUO
1
,
Muneo OHKIDO
1
1東海大学医学部皮膚科
pp.1581-1585
発行日 1985年11月1日
Published Date 1985/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917585
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皮膚と脂質代謝
皮膚は組織学的に表層から表皮,真皮,皮下脂肪組織に分けられる.皮下脂肪組織での脂質代識は通常内科の領域で,表皮と真皮での脂質代謝が皮膚科での研究対象となる.
真皮は線維成分とこれを取り囲む間質とわずかな細胞成分,これに血管・リンパ管,神経,汗腺,毛,立毛筋などとともに脂腺が存在し,同部が脂肪滴を生成する.脂腺は顔面,前胸部,背部正中部などでは密に分布し,同部を脂漏部位と呼ぶ.脂腺で生成される脂質はトリグリセライド,スクワレン,ワックスエステルで,おのおのの全脂腺脂質に対する割合は約60%,10%,25%である.にきび,脂漏性皮膚炎などは,脂腺での脂質の過剰産生がその疾患の基礎になる.脂腺脂質は脂腺の排泄管,毛漏斗を通って皮表に排泄される.その排泄過程でトリグリセライドは常在菌のPropionibacterium acnesのもつリパーゼが働いてジグリセライド,モノグリセライド,遊離脂肪酸へと分解される.スクワレンは排泄過程で分解されることがないので,皮表脂質中に存在するスクワレン量を測定することで脂腺機能を間接的に推測することが可能である.一方,スクワレンは二重結合を6個もつ炭化水素であることから,皮表に排泄されると容易に酸化され,過酸化脂質(TBA反応陽性物質)を生成する.皮表脂質中の過酸化脂質の大半はスクワレン由来と思われる1).
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