特集 臨床生理検査と採血
I.生理検査
筋電図
初山 泰弘
1
1都立墨東病院整形外科
pp.152-154
発行日 1971年2月15日
Published Date 1971/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917291
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活動電位
手足の運動時に働く筋は骨格筋と呼ばれる.この骨格筋は,筋線維と呼ばれる40μないし80μ(μ:ミクロン,1μ=1/100mm)程度の,円柱形または紡錘形の細長い線維が束ねられて作られている.個々の筋線維は,表面を形質膜または筋鞘と呼ばれる薄い膜によっておおわれている.
筋の安静時には,体液中の電解質イオンは,形質膜の特殊な透過性によって図1のように膜の内外では異なったイオン濃度を保っている.この結果,形質膜の内側は外側に比べて−80mVないし−90mVという電気的に負の電位を示すことになる.このような安静時の膜電位を静止電位という.形質膜になんらかの形で刺激が加えられると,この静止電位は減少(脱分極)する傾向を示し,この脱分極現象がさらに進み電位差がある点まで減少すると(−56mVないし−58mV),形質膜の透過性は急変し,短時間のうちに多量のNaイオンが形質膜を通り内部にはいり込む.この現象を膜の興奮または発火という.膜の興奮によってNaイオンの移動が起こった結果,膜内の電位は,膜外の電位に対して1時的に正となり,いわゆる極性の逆転が起こる.ただしこれは短時間の間で,Kイオンが膜内に帰り再び元の電位差に戻る.
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