講座 臨床生理学講座Ⅶ
筋電図<1>—筋電図の役割を中心として
土肥 一郎
1
1中央鉄道病院内科
pp.337-343
発行日 1968年5月15日
Published Date 1968/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916382
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I.はじめに
臨床電気生理学的な検査としては,ありきたりのものをかぞえただけでも,心電図,脳波,筋電図,心音図,脈波,皮膚電気反射,ニスタグモグラムなどがある。このうち生体の発電現象を直接に(ということは振動→電気とか圧→電気とかのような変換を介在きせないで)増幅したものは最初の3つであり,それぞれの場合における発生個所の機能を推測する手掛りを与えるが,さらに発生個所だけでなくそこに到る道すじ,すなわち筋電図でいえば,筋線維以外に,神経筋接合部,下位運動ニウロン,上位運動ニウロン,大脳基底核,およびいわゆる錐体外路系などの各個所の機能をある程度分離して判定する手段として有力なルーチンの検査となってぎている。
この3つの検査のうち,筋電図検査は術者の技能がちがうと結果がちがうという点で,いまだに検査技師に全面的には渡されていない検査法であり,通常は医師が検者となり技師が補助員となって協力して検査を完成するが,その場合に医師の経験年数やその時の状況たとえば充分な時間をかけて落ち着いて検査したかどうか,または患者の協力がどの程度得られたかなどにも左右されるという意味で不安定な要素を内に含む検査法である。しかしそれだけに検者の努力のしがいのある領域であり,しかも検査室が病院内ではたす役割がしだいに独立したものとなりつつあることからみると,将来は技師が熟練した医師と同じ程度に検者として活躍するようになるべき世界であるといえよう。
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