講座 検査技術者のための臨床病理学講座3
糞便検査とその臨床
林 康之
1
HAYASHI YASUYUKI
1
1順天堂大学医学部臨床病理学教室
pp.643-645
発行日 1964年8月15日
Published Date 1964/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916799
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生体は生命を維持し,発育するためのエネルギー源として食物を摂取する。食物のうち水や電解質あるいは水溶性の物質(たとえば水溶性ビタミン)などはそのまま吸収され,タンパク質,脂肪,糖類は消化管内で吸収し易いように分解された後,吸収され,生体内成分に合成しなおされる。この消化吸収の過程で残ったものが糞便として排泄されるわけで,糞便は摂取した食物の性質,消化管全体の機能の良否,器質的な変化の有無をすべて総合した結果を示すものである。したがって,理想的に考えると,糞便検査で消化器管の機能のすべてが判断できるはずであるが,現在行なわれている臨床検査ではきわめて限られた範囲内のことよりわからない。しかし,虫卵,虫体,原虫,細菌検査のように確認できれば直ちに診断の確定する検査もあり,臨床的意義は大きい。以下消化吸収のしくみを簡単に述べ,おもな消化管疾患の臨床像と検査所見を説明する。
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