読後感
アメリカの臨床検査技師
堤 昭憲
1
1唐津赤十字病院
pp.570
発行日 1964年7月15日
Published Date 1964/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916790
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この座談会の記事は,面白くよませてもらった。日本の臨床検査技術師は,現今,para medicalの中最も薄い待遇しか受けていない。諸種給与調査の中で,X線技師より高給である統計を見たためしがない。職務内容が,医療行為そのものにつきすぎる関係からか,業務に医師の指導監督という厳重な枠があるし,何故か,国家試験を受けながら,免許登録は,都道府県に行なうなど他に見られない不過がまちかまえている。国家登録と都道府県登録の差だけでも,つめたい眼がつきまとう。そのことは,日本衛生検査技師会が,当面の運動目標の一つに入れていることからでも明らかである。事務系統や他産業の技術屋には能力に対する地位や身分の報酬がある。しかし検査技師は,畢生縁の下の力持ちにすぎない。すばらしい能力にもそれはそれだけで縁の下の力が大きくなるにすぎない。また病院規模の差によって検査技師の能力を測る尺度についての見方も異なるのではないか?,ともあれ,検査部門管理についても,優秀なる頂点は巾広い底辺に支えられなければならない反面高い頂点に対する魅力にこそ底辺が押し広げられる法則が循環するはずである。
終戦後,日本の医療について,アメリカは最も顕著なものとして,臨床検査と麻酔の立ち後れを指摘したそうであるが,アメリカ医学との接触の中で生れ育つて来たわれわれ臨床検査技師が,アメリカの臨床検査のシステムによせる関心は,やはり,一種の郷愁とでも云うべきであろうか?,私ども臨床検査技師は,日本の医療のためにもつと恵、まれなければならないと考える。
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