特集 日常検査法の基礎知識と実技
臨床化学
尿,糞便の定性検査,尿沈渣
大森 昭三
1
1東京逓信病院・臨床検査科
pp.1271-1277
発行日 1965年12月10日
Published Date 1965/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915866
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はじめに
一般臨床検査士,二級試験などの受験者諸君をみていて感ずることであるが,ある一つの検査種目に対して一種類の方法,それも試験紙などを用いる,いわゆる簡易検査法しかやったことがないという人が最近特にめだつようである。簡易検査法必ずしも不正確なものではなく,従来の方法より秀れたものも多いのであるから,日常の検査業務能率化のためこれらを積極的にとり入れることはむしろ推奨すべきことと思われるが,自分の使っている試験紙にどのような試薬が含まれ,どのような反応機構が応用されているかを全く知らない人が多いということはどうであろうか。もちろん詳細にわたるすべての知識を要求するものではないが,少なくともその概略を知っているかどうかが試験紙の取り扱かい方その他に格段の相違となってあらわれるものである。
定性検査は手技が簡単であるため兎角軽視されがちである。しかし手枝が簡単であるということは裏をかえせばそれだけ特異性に欠けるということであり,特にわれわれの取り扱かう尿,糞便のように食餌により,薬物により,また生理状態によって組成の変動の激しいものでは偽陽性,偽陰性反応の起こる可能性の多いことを常に考慮する必要がある。これらを適確に区別するためには用いられている試薬の性質,その反応機構などが十分に理解され,かつ十分な経験が積まれなければならない。また一つの方法のみに頼ることも誤差の原因となるので避けなければならない。
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