講座 検査技術者のための臨床病理学講座13
臨床化学検査(5)—血清酵素活性の検査とその臨床
林 康之
1
1順天堂大学医学部臨床病理学教室
pp.519-521
発行日 1965年6月15日
Published Date 1965/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915769
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われわれの体内では,食物として採り入れた各物質を複雑な化学反応によって他の物質に転換し,利用すべきものは利用し,生命を維持するためのエネルギーをその反応過程から得ている。この複雑な化学反応を体温である37℃の低温で短時間に進行させ,促進する触媒作用をもつ有機性物質のことを酵素(Enzyme)とよんでいる。酵素は体内の各細胞で合成され,ほとんどタンパク質から成ると考えられており,細胞内での化学反応に関与するもの(Endoenzyme)と細胞外に分泌され細胞外で働くもの(Ectoenzyme)とにわけることができる。また病気を生化学的に解明しようとするためには各臓器組織細胞内の酵素作用と,細胞外に分泌された酵素の働きかたのすべてが観察できればよいことになるが,これは生化学的研究であって現段階における臨床検査ではない。現在の臨床検査としての酵素活性の測定はごくわずかな種類の酵素について体液中(主として血液)の(1)活性値の増減をもとめ,健康者と比較して病気の診断資料をもとめる場合,(2)ある特定の酵素の減少または欠如によって起る病気(本誌,8巻7号567頁参照)を診断する場合にかぎられる。また後者の場合,酵素の欠如によってあらわれる異常代謝産物の証明によってほぼ診断の目的は達せられ,直接酵素の欠如を確認する必要は少ない。以下酵素検査が現在どのように診断に利用され,対象となる主な病気にどんなものがあるかを述べる。
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