Senior Course 生化学
血清酵素活性測定の問題点(1)
正路 喜代美
1
1東大病院中検
pp.577
発行日 1973年5月15日
Published Date 1973/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908097
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国際生化学連合(IUB)酵素委員会は,酵素活性測定に関して‘基質濃度,pH,補酵素や補助因子の濃度を最適条件とし,30℃における1分間の基質変化が1μmolの時,1国際単位とする.’と勧告しているが,臨床検査において酵素活性の測定法は種々雑多で,手法,自動分析とも零次反応は守られるが,温度(30℃)は,採用した測定法や装置によりまちまちである.温度が高いと反応速度が速くなり,零次反応の条件が早く,くずれてくる.その他種々の因子が酵素活性測定値を左右する.昨年シカゴで開催された"パネルディスカッション:酵素学における国際セミナーとワークショップ"における討論の記録を参老にして問題点を考えてみたい.
たとえば,血清アルカリホスファターゼを種々の測定法で得た値をそれぞれ国際単位に換算すると事実上一致しない.このことは,血清酵素が組織由来により性状を異にしていること,すなわち基質の種類,pH,緩衝液の組成や反応温度に対する活性の態度が異なる点にあると思われる.これら活性値を左右する原因は,各検査室で,手持ちの測定装置を用いて酵素活性を測定する場合,条件設定に種々の制約が起こり,さまざまな活性値を与える結果となる.このような混乱を避ける方向で,臨床的測定意義の高い,最適な反応条件による測定法が規準化されることを望むが,規準化することは大変なことのようである.
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