今月の主題 薬剤の検査
技術解説
薬剤検査のための生体試料処理
古徳 迪
1
1鳥取大学医療技術短期大学部
pp.1497-1504
発行日 1980年11月15日
Published Date 1980/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915649
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生体に投与された薬剤が期待された薬理学的効果を上げるためには,一定範囲内の血中濃度をある時間維持する必要がある.普通に使用される薬剤の投与量は効果を上げるのに十分な濃度に達するよう定められている.ところが藤井ら1)は,てんかん患児115例に抗てんかん剤フェノバルビタール(PB),ジフェニルヒダントイン(DPH)を投与したとき,投与量と血中濃度との間に高い相関は認められず著明な個人差があること,PBの遊離型の血中濃度が高い場合に発作抑制の良いものが多いこと,DPH血中濃度の低い場合には発作抑制の悪いものが多いが,他剤の併用によりDPH濃度を上げると発作が抑制されることなどを見いだしており,治療において薬剤の血中濃度測定が重要な意味を持つ場合のあることを明らかにしている.
その他,例えば蓄積作用あるいは習慣作用を持つ薬剤を使用している際,必要なときに血中濃度を知ることができれば治療上非常に有益であることは論をまたない.近年薬剤の体液中濃度測定に関する報告がしだいに多くなってきているのは,分析法の進歩のほかに,その重要性が認められてきたことによると思われる.
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