負荷機能検査・10
末梢血管の負荷試験
平井 正文
1
1名古屋大学病院分院外科
pp.1177-1182
発行日 1980年10月15日
Published Date 1980/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915598
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末梢血管疾患における負荷試験は,運動や体位変換などにより四肢の血行動態を変化させるものであり,二つの意義を持っている.一つは四肢の機能能力,例えば下肢では歩行能力を評価するという目的に用いられる.下肢動脈閉塞性疾患に特異的な症状である間歇性跛行は,運動時に生ずる筋の阻血が原因であり,歩行中に下肢に疼痛やひきつれが生じ歩行不能となるが,立ち止まると数分で症状が消失するものである.歩行不能になる歩行距離は閉塞の強さと側副血行の発達の程度とにより異なり,この歩行能力の評価にはトレッドミルなどを用いて実際に歩行させてみることになる.たとえ大腿動脈や膝窩動脈に閉塞病変が存在しても,側副血行の非常によく発達した症例では,このような検査時にも正常と評価される.
もう一つの負荷試験の意義は,診断率を向上させ疾病の程度を他覚的また定量的に評価させうるということである,一般に末梢血管の診断は問診,視診(四肢の変色,腫脹,萎縮,短縮,静脈拡張の有無など),触診(皮膚温の変化,動脈拍動の強さ,Thrillの有無など),聴診(血管雑音の有無)により比較的容易である.更に他覚的また定量的診断法として血管撮影法,種々の脈波法,超音波ドップラー法,サーモグラフィー,色素希釈法,133Xeクリアランス法,99mTc perfusion scan法などが用いられる.
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