カラーグラフ
解説
赤木 正志
1
1八尾市立病院皮膚科
pp.124
発行日 1977年2月15日
Published Date 1977/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914261
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症例1はクロモミコーシスの患者に認められたフザリウム肉芽腫でちる.この患者は9年前から右下肢令体・顔・両上肢に疣状皮膚炎の病巣が多発し,電気焼灼を繰り返していたが,ケタラールによる全身麻酔を行った翌日から健康側の左踵部に有痛性の紅斑が生じ,栗実大の深い難治性の潰瘍となり,5か月半ばかりたってようやく写真のように縮小した.その際一部に小豆大の肉芽腫が生じ,他の潰瘍面から際立って隆起しており,あるいは黒色菌の転移ではあるまいかと思って切除して検索した.するとその組織標本から特異な形態の菌要素が認められ,また初期に紅色,後に紫色となる白色綿毛状集落を作るFusarium sp.を分離したために,この疣状の肉芽腫はフザリウム肉芽腫であることが明らかになった.
患者の自覚症状は全くなく,組織像では他の真菌症に見られるような巨細胞はなく,細胞浸潤も軽微であり,組織を見る限りでは,枯木に宿り木が寄生するように,たまたま再生しつつある肉芽の中にFusariumがまぎれ込んでいるような寄生関係がうかがわれるにすぎなかった.この症例を1972年奈良の日皮会中部に報告したところ,雑菌汚染と見なさないのかという意見があった.
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