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医用レーザの原理と現状
レーザとはLight Amplification by StimulatedEmission of Radiationの頭文字LASERのことであり,「誘導放出による光増幅」を意味している.したがって本来は光の増幅とその仕方を表すことばであったが,今日では品質のよい特定の周波数の電磁波(光)を出す発振器という意味で使われている.「誘導放出」とは1917年にアインシュタインが理論的証明を行った光の増幅現象でありレーザ光発生の基本原理である(図1).原子核の周囲を回っている電子は,ある特定の強度のエネルギーを受けると励起され,一段階上のエネルギー順位に移る(ポンピング).その逆に励起状態から基底状態に戻るときには特定の周波数の電磁波(光子)を放出する(自然放射).一方,予め励起されていた電子が特定の周波数を持った光子に衝突されるとその光子自身は消失せずに,電子はその影響で基底状態に落ち,その際自然放射の時と同じく光子を放出する(誘導放出).つまり1個の光子が入ると2個の光子が同じ位相で放出され,光の増幅が行われることになる.
誘導放射が行われるためには電子が予め励起されていなければならないが,その励起方法としては次の4つの方法が使用されている.①光を用いる光励起.②自由電子による電子励起.③少数キャリア注入による電流励起.④物質の化学反応による化学反応励起.また発振を生じるためには増幅器とともに共振器が必要であるが,これには通常鏡を組み合わせたファブリ・ベロー共振器が用いられている(図2).この方法を「集中フィードバック法」と呼ぶが,そのほかに固体増幅媒質中の屈折率をBragg条件に適するように光の伝搬方向に周期的に変化させることにより,反射を分布させて行う「分布フィードバック法」もある.
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