学会印象記
第62回日本細菌学会総会/The 89th American Society for Microbiology
橋本 安弘
1
Hashimoto Yasuhiro
1
1岐阜大学医学部微生物学講座
pp.892,900
発行日 1989年8月15日
Published Date 1989/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914037
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病原細菌研究の新展開
第62回日本細菌学会総会は加藤巌会長(千葉大学医学部微生物学第二講座・教授)によって主催され本年3月27,28,29日の3日間,東京都千代田区平河町の日本都市センターとこれに隣接する全国都市会館で盛大に開催された.
今年の浅川賞受賞講演は「B群赤痢菌による細菌性赤痢の病理発生に関する分子遺伝学的研究」と題して東京大学,医科学研究所の吉川昌之介教授が第2日目(3月28日)の午後,一時間にわたって講演された.細菌性赤痢の病理発生に細胞侵入性が決定的に重要であり,完全な病原性の発現には染色体上の少なくとも三領域が必要であることが20数年前からわかっていたそうであるが,吉川教授とその御一門は,Rプラスミドの遺伝学的,分子遺伝学的研究で培われた鋭い思考と的確な新技術を駆使して,Shigella flexneriのプラスミドおよび染色体上のビルレンス遺伝子をみごとに解析され,1983年以来精力的に行われた研究を手際よくまとめて提示された.われわれの講座の江崎講師が吉川教授の指導を得てSalmonella typhiのラクトース遺伝子を解析し,現在さらに講座を挙げてその病原因子の分子遺伝学的研究にとり組んでいることから,吉川教授の受賞講演によりその研究の全貌を要約した形で聞かせていただき非常に感銘深かった.
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