今月の主題 眼と耳
検査と疾患—その動きと考え方・117
網膜症
松井 瑞夫
1
Mizuo MATSUI
1
1日本大学駿河台病院眼科
pp.1655-1662
発行日 1986年12月15日
Published Date 1986/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913206
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はじめに
網膜症(retinopathy)という用語には明解な定義はない.しいて言えば,炎症,変性,ジストロフィなどと直接の関係ない網膜の異常とでもいうことになるのであろう.しかし,その用語が使用され出した経緯に,尿蛋白性網膜炎,血管痙縮性網膜炎,腎炎性網膜炎など血圧亢進を伴う全身異常に伴って発生する眼底異常が炎症でなく,網膜炎という用語は合理的でなく網膜症と呼ぶべきだとされたことがあることはまちがいない.また,本誌の今回の企画をみると「網膜症」という用語が,全身疾患と関係ある網膜異常という意味で取り上げられていることも明らかである.したがって,ここでは「網膜症」という筆者に与えられたテーマを,上述のように全身疾患に伴って発生する網膜異常と解釈して,解説を進めることにする.したがって,ここで網膜症として取り上げるのは以下のものである.
1.高血圧性網膜症
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