医学の中の偉人たち・5
William Harvey 実験生理学の再興
飯野 晃啓
1
1鳥取大学医学部解剖学第1
pp.546
発行日 1986年5月15日
Published Date 1986/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912961
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私の手もとに『動物の心臓ならびに血液の運動に関する解剖学的研究』という岩波書店発行の文庫本がある.この小冊子は解説も加えて200ページの書物であるので,通読するのにあまり時間はかからない.この著こそHarveyの血液循環の理論を日本語に翻訳したものであり,原著は1628年Harvey 50歳のときに書かれたものである.
Harveyは1578年,イギリスのフォルクストンという港町に生れた.父は実業家として成功し,フォルクストンの市長に何回か選ばれた人望の高かった人であった.9人兄弟(男7人・女2人)の長男として生まれたHarveyは,子供のころより動植物の観察に興味を示し,静かに考えごとをするのを好んだ.弟たち6人は,父と同じ実業家として貿易に携わり,皆,裕福な家庭を作った.商業に関心を示さなかったHarveyの性質を見抜いた父親は,医学の道をHarveyに勧めた.
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