特集 産業医学と臨床検査
Ⅱ.有害因子と臨床検査
2 化学的因子
9 バナジウム
山村 行夫
1
Yukio YAMAMURA
1
1聖マリアンナ医科大学公衆衛生学教室
pp.1387-1391
発行日 1984年11月1日
Published Date 1984/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542912378
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□はじめに
地殼中のバナジウム(V)は遊離金属の形としてではなくて,不溶性塩の形,特に三価の状態で亜鉛やニッケルなどと同様に豊富に存在する.バナジウムはカルノー石,ウラニウム・バナジウム鉱,リン酸岩堆積物,チタン磁鉄鉱,粘土ケツ岩などの鉱物資源中に含まれている.バナジウムは,また化石燃料中にも含まれている.
海水中には微量のバナジウムが含まれている.バナジウムはホヤやナマコなど,ある種の海水中動物ではヘモバナジンとして呼吸触媒の役割を果たしており,これらの動物の呼吸色素にはバナジウムが10%以上含まれている.これらの動物はバナジウムを海水中から取り込んで濃縮する.その動物の死骸は海底に堆積し,やがて石油などの化石燃料が生じたものと考えられる.ベネズエラ産原油の残渣灰の中には,バナジウムは0〜40%含まれている(表).ボイラーで重油を燃焼すると,バナジウムは五酸化物として煙道の壁に沈着する.ベネズエラ産の重油を使用している船舶の煙道から,毎年,20トン以上のバナジウムが回収されるという.この煤は酸性であり,煙道作業員がその煤を吸入すると目,咽頭,気管,気管支,肺などの粘膜刺激症状が生じる1).
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