Ex Laboratorio Clinico・55
無アルブミンラット
長瀬 すみ
1
1佐々木研究所化学部
pp.774-779
発行日 1981年7月15日
Published Date 1981/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911283
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ヒト無アルブミン血症について
"今度,うちの研究所でアルブミンのないラットができました",他の研究の話の合い間に私が一言そう言ったとたん,日本を代表する高名な生化学者であるS博士は,"えっ,本当?"と2〜30cm飛び上がった."ねえ,その話もっと詳しく聞かせてよ".興奮で眼をキラキラ輝かせた博士のその顔を私は一生忘れない.
今さら述べるまでなく,血清中の蛋白質の50%以上を占め,膠質浸透圧の維持,種々の金属やビリルビン,ある種のホルモン,薬物などのすべてまたは一部の輸送など,多彩でかつ重要な機能を営むと言われるアルブミンが全然なければ,S博士でなくても動物は生きていられないのではないかという疑問が起こる.私は,たまたまヒトの臨床検査の仕事に携わっていた関係上,ヒト無アルブミン血症の知識を若干持ち合わせていたので,アルブミンのない動物が生きることに,それほど意外性を感じなかったのかもしれない.
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