アイソエンザイム・6
LDH
加野 象次郎
1
,
嵯峨 実枝子
1
1慶応大学病院中検臨床化学
pp.661-667
発行日 1981年6月15日
Published Date 1981/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911260
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生体中で特定の代謝反応をつかさどる酵素が,類似の触媒活性を有しながら,しかも異なる一群の酵素蛋白として存在するというアイソエンザイム(isoenzyme,isozyme)の概念1)は,1950年代の乳酸脱水素酵素(LDH)に関する一連の研究から導き出された.その当時は,いろいろな動物臓器中のLDHについてちょうど導入され始めたデンプン電気泳動法を用いて精力的な解析がなされた時代であり,臓器によって異なる電気易動度を有するLDHが多様に存在している事実が相次いで蓄積されていた.これらを背景にして,1959年のMarkertとMollerによるアイソエンザイムの用語の提唱が行われるわけであるが,1963年に至ってMarkert2)がLDHアイソエンザイムの解離と再会合実験に初めて成功したことは,アイソエンザイムの研究の歴史にとって極めて価値の高いものであった.
一方この1950年代には,既に血清LDH活性の測定は臨床的に応用され始めていたが,心,肝,骨格筋,腎,血液疾患や悪性腫瘍など広範な病変でいずれも血清LDH活性の上昇が認められることから,LDHは診断特異性に乏しいとの認識を下されかけていた.しかし,皮肉にもそのLDHにおいて,臓器により異なるアイソエンザイムが存在するという事実が発見されるに及び,LDHはアイソエンザイムとしての認識を新たにされ,早くも60年代の初めには損傷臓器の診断に広く活用されていくのである3).
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