今月の主題 貧血
検査と疾患—その動きと考え方・54
小球性低色素性貧血
高久 史麿
1
1自治医科大学内科
pp.639-646
発行日 1981年6月15日
Published Date 1981/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911257
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小球性低色素性貧血は平均赤血球容積(mean corpuscular volume;MCV),ならびに平均赤血球ヘモグロビン濃度(mean corpuscular hemoglo-bin concentration;MCHC)が正常よりも減少している貧血症の総称である.成熟赤血球中の蛋白質の大部分はヘモグロビン蛋白で占められており,赤血球は極論すればヘモグロビンを包んだ膜のようなものであると言うことができる.したがってヘモグロビン合成の障害は,赤血球内ヘモグロビン濃度の低下,すなわち赤血球の低色素性とともに赤血球の小型化,すなわち小球性をもたらしてくる.
ヘモグロビンは鉄,プロトポルフィリン,グロビン蛋白,の三者から成り立っているが,その合成の障害も表1のごとく,①鉄代謝,②ポルフィリン・ヘム合成,③グロビン合成,の異常のいずれかによってもたらされる.その中で最も頻度が高いのが鉄欠乏性貧血である.以下症例を紹介しながら,小球性低色素性貧血の診断に至る過程を検査に重点を置いて述べる.
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