特集 臨床検査室マニュアル
Ⅴ.検査データからみた疾患の特徴
糖尿病
平田 幸正
1
1東京女子医大・糖尿病センター
pp.1298-1299
発行日 1976年11月1日
Published Date 1976/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909577
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1.概念
今日,糖尿病の概念はむしろ複雑なものとなっているようにみえる.その理由は,かつてのように尿に糖が出ていればすなわち糖尿病と考えていたことの誤りであることが反省されたからであり,更にまた血糖さえ高けれぼ糖尿病と考えられていたことにも批判が生まれたからである.他方では,血糖も高くなく尿糖も陰性の時期から,既にprediabetesという状態であると考えられる糖尿病の存在することが説かれている.また高血糖の存在と尿糖陽性ということで,糖尿病患者の糖尿病状態と全く変わりのない状態がもともと糖尿病者でないものにも惹起される.これは普通にいわれている糖尿病(一次性糖尿病)ではなく二次性糖尿病として区別されるべきであると説かれている.
普通の糖尿病,すなわち狭義の糖尿病という疾患単位は次のような特徴をもつ.すなわち①先天性素因すなわち遺伝傾向がある,②糖尿,高血糖を生じやすい,③ブドウ糖負荷試験に際し,高血糖で反応し,かつ血糖の下降の遅延を来し,この際の血中インスリン(IRI)初期反応の著しい低下と遅延を示す.この高血糖は,やがて空腹時血糖の上昇へと進展する,④糖尿病性細小血管症や神経障害の合併を生ずる,などの特徴をもっているといえる.
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