Senior Course 共通
科学論文の書き方—若い研究者のために
春田 三佐夫
1
1東京都衛研生活科学部
pp.234-235
発行日 1976年2月15日
Published Date 1976/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909299
- 有料閲覧
- 文献概要
論文執筆の意義
研究成果を論文にまとめて公表するのは,研究者としての当然の義務なのです.しかも研究というものは,フルペーパーの形でしかるべきものに発表されて,初めて完了したことになるのです.いかに内容の良い研究をしても,それをまとめて一般に公表しなければ,だれも認めてはくれません.だが,ひとたび文字にして出すとなると,その内容について独創性があるとかないとか,考え方や方法論がどうとか,いろいろ批判されるのを覚悟しなければなりません.それがこわくて発表しないというのなら,研究などやらないことです.論文の価値判断はあくまで第3者のやることで,自分がやるのではありません.内容にようては一顧の価値なしとされることもあり,逆にそれにヒントを得て,もっと立派な研究をする人も出てくるでしょう.しかし,コロンブスの卵ではないが,初めに土台を築いた入はやはり先輩として尊敬されるのです.ということは,より良い研究はあくまで先人の業績を基礎にして実るものだからです.研究に当たっては妙な功名心を捨て,謙虚にかつ冷静に真実のみを追求する誠意と勇気をもって,絶えず努力を積み重ねていくことが肝要です.人生は,いわば試行錯誤の連続です.そうした過程の中で,時には少しずつ,あるときは大きく進歩し,発展していくのが人間の姿だといえましょう.ですから,今後は,どんな小さな仕事でも論文の形にして公表するよう努力すべきです.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.