ひろば
ああ!こんなに便利でよいのだろうか?!
近藤 友一
1
1田端中央病院検査室
pp.1425
発行日 1975年12月15日
Published Date 1975/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909208
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事情があってはしばらく検査の仕事を離れていた.再就職のために,ある病院へ面接へ行った.主任らしき人が,"君,この機械知っているかね"と次々と新しい機器を見せた."いえ,初めて見ました"それらは私にとって初めて見るものばかりであった."だめだなあ,今からの技師は機械に詳しくなきゃいかん,こんな機械も知らないようじゃ,科学の進歩においていかれるぞ"私はその人の傲慢な広言に憤りを覚えるよりも,完全にこの人が機械に支配されていることのほうが心に残った.
今や,臨床検査部門はあらゆる種類の機器や自動分析器が導入され,検査内容の充実と多数の検体処理になくてはならない物となってきた.ごく数年前までは,試薬は天秤で計り,すべて自分で作った.それがキットなる物が出現し,こりゃあ便利だと思っているうちに,自動分析器なる怪物が現れ,ボタン操作一つで値が出るようになった.なんと目覚ましい進歩であろうか.ただ驚くばかりである.もう試験管を1本1本ブラシを通す必要もなく,血球計算だってメランジュールを必要としなくなった.自慢のピペット操作も生かす機会もだんだんと減り,あれほど一所懸命覚えた検査技術は,機械技術にのみ込まれようとしている.臨床検査の目覚しい発展とともに検査項目の増大,慢性的な技師の不足を補ううえにおいて,自動化の進歩は必然だったのである.だれでも,いつでも,簡単に操作できる.
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