総説
癌とは何か—吉田富三氏に聞く
天木 一太
1
,
吉田 富三
2,3,4,5
1日大・第1内科
2癌研究会癌研究所
3佐々木研究所
4日本病理学会
5日本癌学会
pp.256-261
発行日 1972年3月15日
Published Date 1972/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907545
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癌細胞の特徴
—まず,癌あるいは癌細胞の特徴というようなものについて,お話しいただけませんか.
吉田 癌細胞というのは正常の細胞が癌化したものです.正常の細胞は,ある一定の組織構造をもっている場所に存在するということが1つの特徴です.たとえば,社会は一定の組織構造をもったものですね,オルガニゼイション(organization)という.人はその構造の中で生活している.細胞も同じように構造の中に生活している.そういうものから形式の上でいうと,離脱するということが,細胞が癌細胞になって増殖する場合の1つの特徴ですね.正常の細胞だと,その生活にとって,一定の定まった場所があるわけです.その定められた場所,つまり組織構造の中で生きているんだけれども,そこから離れて1個ずつになっても生活する能力を獲得することが,細胞が癌化するということの大きな1つの特徴ですね.1個ずつ離れたといってもそれは,2-3個が集団を作ったりなんかしていることもあるが,その集団として離れているわけです.こういうことが癌化ということの形の上での特徴,つまり形態学的な特徴ですね.
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