技術解説
TSI培地におけるブドウ糖非発酵菌
坂崎 利一
1
1国立予防衛生研究所細菌第1室
pp.962-966
発行日 1970年10月15日
Published Date 1970/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906920
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TSI (Triple Sugar Iron)培地は,いうまでもなく腸内細菌およびそれに類似のグラム陰性杆菌同定のための鑑別培地で,ブドウ糖発酵菌は本培地の高層部で酸を産生してその部を黄変させるが,その他の菌では高層部,斜面部とも無変化にとどめるか,または培地をよりアルカリ性に導く.医学細菌学上,前者すなわちブドウ糖発酵菌に該当するものは,腸内細菌,Aeromoitas, PlesiomonasおよびVibrioおよびChromobacteriumviolaceumで,これらの菌についての同定の知識はかなり普及しているために,ルーチンではさほどの困難もなく同定がすすめられている.なお,医学に関係のあるブドウ糖発酵菌には,以上のほかにPasteurellaおよびActinobacillusがあるが,これら両者はふつうTSI培地には発育しないので,ここでは問題外である.
ブドウ糖発酵菌とは反対に,ブドウ糖非発酵のグラム陰性杆菌,すなわちTSI培地ての-/-所見を示す菌については,近年臨床材料からの分離が増加しているにもかかわらず,いままでこれらの菌についての細菌学的および分類学的知見に乏しかったために,ほとんどの場合,満足な同定が行なわれていない。今回はこれらの菌の同定の進め方について解説する.
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