技術解説
組織化学および酵素組織化学入門
山村 武夫
1
YAMAMURA TAKEO
1
1慶応義塾大学病理学教室
pp.575-581
発行日 1963年8月15日
Published Date 1963/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906145
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はじめに
組織化学的方法によって,研究すべき物質(タンパク質,核酸,脂肪類,多糖類,無機物質,色素あるいは酵素など)が細胞組織のいかなる部位に,いかなる状態で分布しているかということ,すなわち,きわめて微量な研究すべき物質の細胞組織内での局在性(lokalisation)を知ることができる。生化学的方法によっては,研究すべき物質を定量ないし定性するためには,それに可能な,比較的多量の量が必要であり,そしてその量のなかに目的とする物質がどのくらい含まれているか,その平均値しか知ることができない。その物質が細胞の原形質あるいは核のなかに存在するのか,あるいは間質にあるのか,その局在性をほとんど知ることができない。局在性を知ることができるということが組織化学的方法の最も大きな特徴の一つである。組織化学は,各種物質の細胞組織における局在性を検索して,生理的ないし病的な状態における生体の機能・代謝を研究するのが目的である。従来の形態学的方法(電子顕微鏡的方法を除く)では検索し得なかった生体の機能が,組織化学的方法によって,形態との関係において明らかになりつつあるというのが現状である。従って,組織化学は形態学と機能学(生化学,生理学)との中間に存在する学問あるいは両者を結びつける学問,すなわち,形態機能学とも理解することができる。
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