研究
新潟大学中央検査部における最近2年間の梅毒血清反応検査成績と二三の考察
屋形 稔
1
,
滝沢 行雄
2
,
小林 茂孝
2
,
広川 宏
2
1新潟大学医学部中央検査部
2新潟大学医学部
pp.703-708
発行日 1962年10月15日
Published Date 1962/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906028
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Ⅰ.緒論
わが国において,第二次大戦前幾分減少傾向にあった梅毒は,終戦を機として爆発的増加をきたしたことは周知のごとくである。しかし,医学のめざましい進歩,とりわけペニシリンなどの画期的薬品の応用および公衆衛生思想の向上により,反転して昭和25年頃から急減してきた。このことは田中,石田1)および足立2)らの統計的観察によっても明らかである。
ところで今日,顕症梅毒はほとんどみられなくなり,このため最近の梅毒は,先天梅毒をも含めてほとんどすべてが潜伏梅毒ということになってしまった。従って,その診断はもっぱら梅毒血清反応の成績に依存しているといっても過言ではない。もちろん梅毒血清反応は,その特異度および鋭敏度において最近飛躍的に高揚はされたが,抗原そのものが梅毒と無関係な非特異的なものである以上,梅毒以外にも当然陽性を示す。すなわち生物学的偽陽性反応(Biologic False Positive Reaction(BFP))として注目されているものである。すなわち現在梅毒の診断,治療の面だけでなく,血清学的方面において,特に膠原病等のBFPに関連して,種々の問題点を含んでいると言わざるを得ない。
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