展望
臨床検査における正常細菌叢の意義および取り扱い方
上条 清明
1
1順天堂大学
pp.371-375
発行日 1962年6月15日
Published Date 1962/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905974
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動物はもちろん人間でも各臓器にはかなりの種類の細菌が存在する。正常の状態では,直接外界と接触のある所,すなわち皮膚,口腔,鼻腔,呼吸気道,消化管,泌尿生殖器には,必ず何種類かの細菌群が常住し,これを正常菌叢(normalflora)と呼ぶ。その中には,一般に病原性菌として知られているもの(肺炎球菌,肺炎杆菌,クロストリジウム属菌群など)もあり,また皮膚表面や口腔内のブドウ球菌,枯草菌群,真菌類などのように非病原性のものもある。これらの菌群は,ふだんは病原性を発揮することなく,単なる常住菌として存在するが,人体の栄養条件の悪化や外傷などに際しては,あるいは単独の菌種で,あるいは何種類かの混合感染の状態で,病気の起因菌となることがある。
一方これらの菌群は,見方を変えてみると,その中のあるものは本来自然界に存在するものであって,病原性もなく,単に偶然に人体表面あるいは粘膜面に付着していると考えられるものであり(枯草菌,プロテウス菌,真菌,ブドウ球菌など),他の一群は,人体の常住者としてのみ生存が可能であって,時には自然界から発見されるにしても,主たる所在は人体の粘膜面であるとみられるものである。
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