技術解説
結核菌の迅速耐性検査の手技
小川 辰次
1
,
斎藤 直蔵
1
1北里研究所付属病院
pp.555-557
発行日 1961年9月15日
Published Date 1961/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905874
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まえがき
結核症の化学療法に,結核菌の耐性検査を必要としないと考えている外国の学者もあるが,わが国では,耐性検査を実施して化学療法を行う事に一致している。投与前には,化学療法剤の選択の為に,投与中には耐性の上昇をコントロールする為に,投与後は,今後の化学療法の方針をきめる為に,実施される事が望ましい。ところで結核菌以外の一般細菌では,耐性検査は,2〜3日中に完了するから,その成績を直ちに臨床の上に反映させる事が可能であるが,結核菌の耐性検査は直接法が約1カ月,間接法ともなれば2カ月もの長期を要する。この点は現在使用されている耐性検査法の大きな悩みである。しかし耐性の検査を早く完了してもらいたいといつた要求は最近余り聞かない。結核症のテンポがおそいから,そう急いでやる必要がないと云うのか。そうではない。結核症は慢性疾患であるとは云え,早期診断,早期治療は結核症における常識である。したがつて結核症においても可及的に判定して臨床に応用する事は,当然であろう。それなら何故,迅速耐性検査の要求が少いのであろうか。それは一つには,耐性の検査の成績がわからなくとも,2剤,あるいは3剤の併用療法をやつておけば,1剤あるいは2剤に耐性であつても,残りの1剤あるいは2剤に効果が期待できるし,たとえそれが当らなくとも,結核症では,安静だけでもある程度の症状は消失する。
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