技術解説
ABO式血液型判定の実際
遠山 博
1
,
衣笠 惠士
1
,
中西 敬
1
1東京大学輸血部
pp.103-110
発行日 1958年2月15日
Published Date 1958/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905439
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1900年より1901年にかけて,Karl Landsteinerによつて輸血学史上最大不滅の業績とも申せるABO式血液型発見の発表があつて以来,輸血に特に関係の深い血液型の血清学的研究はRh式血液型,その他のものを次第に明かとし来り,輸血の安全性を次第に確立し来つたが,現在となつてもその中で最も必要なるものがABO式血液型である事は勿論言を俟たない所である。しかるに我が国に於ける血液型に関係した輸血の事故を見てみるに,一般に誰にも容易に出来る手技と考えられているABO式血液型の誤判が案外多い事が松橋によつて1)も先に述べられた。目を国外に転ずるにデンマークに於けるEldon2)の統計によればABO式の誤判は熟練者の場合で0.5〜1.0%,未熟練者では実に4〜10%に達するという。
これは我が国のそれより高いかも知れないが,反応の弱いA2型やA2B型が我が国よりも遙かに多いとされているので,全く同一に比較する事は当を得て居らない様にも考えられる。しかし何れにせよABO式の間違が案外多い事は事実であつて,医業にたずさわる者は常に心せねばならぬ事であろう。不幸にして間違いを起す場合は次の三つの点に大別される様である。①判定用抗A,抗B各血清に欠陥のある場合。
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