今月の主題 高齢化
話題
内因性NO合成酵素阻害物質と老化
松岡 秀洋
1
,
今泉 勉
1
Hidehiro MATSUOKA
1
,
Tsutomu IMAIZUMI
1
1久留米大学医学部第3内科
キーワード:
冠危険因子
,
加齢
,
血管内皮
,
動脈硬化
Keyword:
冠危険因子
,
加齢
,
血管内皮
,
動脈硬化
pp.405-411
発行日 2001年4月15日
Published Date 2001/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904736
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1.はじめに
17世紀に英国の医師Thomas Sydenhamが"ヒトは血管とともに老いる"と示唆したように,血管の形態的・機能的変化は老化のプロセスにおいて極めて重要な役割を果たしている.すなわち,老化に伴い,大小動脈においてカルシウムが沈着し間質の変性や血管平滑筋の増加による血管コンプライアンスの低下がみられ,細小動脈においてヒアリン―フィブリノイド蓄積と安静時末梢血管抵抗上昇が生ずるために心負荷が増加する.さらに,血管拡張反応低下/収縮反応亢進という血管反応性の異常が加わり,これらが錯綜することで,高齢者にみられる心血管病の病態が形成される.
一酸化窒素(NO)は,ガスであることに由来する受容体を介さない迅速な信号伝達と,ラジカルであることに由来した産生局所での不活化のため主にパラクリン―オートクリンとして作用するという特性を有し,極めて多彩な生物学的活性を呈する.すなわち血管内皮から産生されたNOは,血管トーンの調節・血小板凝集粘着抑制・細胞接着分子発現抑制・血管平滑筋増殖抑制などを介して血管保護作用を有するのみならず,その合成酵素の局在部位により,中枢および末梢の交感神経活性や,腎におけるナトリウム利尿を通じて循環調節に大きく関与する.
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