今月の主題 毒物検査
巻頭言
毒物検査と臨床検査
鈴木 修
1
Osamu SUZUKI
1
1浜松医科大学法医学
pp.1479
発行日 2000年11月15日
Published Date 2000/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904611
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1994年6月27日,長野県松本市で正体不明の毒ガスを吸引して7名が死亡,500名以上が重軽傷となる事件が発生した.しばらくして現場近くの池の水から,化学兵器として使われるサリンの分解物と推定される物質が検出された.翌年1995年3月20日,通勤時間内の東京の地下鉄で毒ガス事件が発生し,死者13名,重軽傷者5,000名以上という前代未聞の大惨事となった.東京の場合,松本での経験から,その日のうちに原因物質はサリンであると特定された.東京地下鉄サリン事件は日本はもちろん,世界中を震憾させた.それは同様なテロがニューヨークやその他の大都市でも起こり得ることが現実感を持って危惧されたからである.1998年7月25日には和歌山市において,亜ヒ酸入りカレー事件が発生し,市民4人死亡63人が中毒入院した.その後,奇怪な中毒模倣事件が多数続発している.
このような一連の中毒事件発生を受けて,政府は内閣直属の「毒劇物対策会議」を設立し,1998年11月27日に報告書が出され,そのなかには色々の提言がなされている.これによって全国の各高度救命救急センターと各県に,一度きりではあるが予算措置が行われ,分析機器の整備に当てたとされている.しかし,実際にこれらの機器が全国で十分に稼働しているか否かはなははだ疑問である.
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