一口メモ
クラミジア感染症
椎名 義雄
1
1杏林大学保健学部細胞診断学
pp.1410
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904590
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子宮頸部のクラミジア(Chlamydia trachomatis;CT)感染は近年増加傾向にある.本症の多くは無症状で経過するため,細胞診で診断する意義は大きい.CT感染症の標本背景には成熟リンパ球に加え反応性の大型リンパ球が見られることが多く(濾胞性頸管炎と診断できるほど増加することは少ない),診断上最も重要な所見となる.このような所見が見られたら,標本上の組織修復細胞,扁平上皮化生細胞の細胞質を丹念に観察し,特有な星雲状封入体(nebular inclu-sion;NI)を確認することで確定診断が可能である.ただし,NIは感染例の約30%の症例に見られる所見であるため,背景に大型リンパ球が出現している症例は「他の検査でCT感染の有無を確認して下さい」とのコメントが重要と思われる.NIは種々の形態を示すが1),通常のパパニコロウ染色ではヘマトキシリンで弱く染色される.粘液胞との鑑別を要すが,粘液胞はその周囲が厚く明瞭であるのに対し,NIの多くは不明瞭で,細胞質との境界が見られる場合はNIと細胞質との境界に不染間隙が存在するのが特徴である.
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