特集 細胞診―21世紀への展望
第4章 判定の実際
21.卵巣:組織型の判定
山内 直子
1
Naoko YAMAUCHI
1
1東京大学大学院医学系研究科人体病理学
pp.1355-1358
発行日 2000年10月30日
Published Date 2000/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904577
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卵巣疾患の細胞診の現状
卵巣疾患において細胞診の対象となるのは主として腫瘍性病変である.卵巣腫瘍には多数の組織型があるが,悪性腫瘍では多くが腺癌であるため,細胞診ではまず腺癌であるか否かを識別することが求められる.さらに,卵巣癌は組織型によって生物学的悪性度が異なり,治療法にも影響してくるので組織型判定が重要なポイントとなってくる.しかし実際は,腺癌であることを識別した後,細胞診でさらに詳細な組織型を判定するのは困難なことも少なくない現状である.
細胞像に特徴が見いだしやすい例としては,細胞質が豊富で粘液を貯留している粘液性嚢胞腺癌や,独特の明るく広い細胞質を持つ明細胞腺癌などの典型例が挙がり,また,漿液性嚢胞腺癌では砂粒小体の出現が他の組織型より高率なため,診断の助けとなるのは事実であるが特異的なものとは言えない.さらにはこのような特徴の見られないものでは,示唆はできるが判定は難しいということがしばしばである.
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