Topics 1998
水系の下痢症
山本 徳栄
1
1埼玉県衛生研究所・環境衛生部
pp.1474
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903915
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近年,水系による下痢症の集団発生を起こす病原微生物として,消化管寄生原虫であるクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)が注目されている.この原虫は通常の浄水処理では完全には除去できず,塩素に対しても著しく耐性を示す.これらの原因を含め,米国と英国では1983年から1997年までに,水道水によるクリプトスポリジウム症の集団発生が25事例も報告されている1).わが国では,1996年に埼玉県O町で本原虫に汚染された町営水道により,住民だけでも8,800人以上が感染し,県内外から訪れた施設の利用者や従業員も多数感染している1).
本原虫は,胞子虫綱のコクシジウム類に属する.金世界に広く分布し,多くの種が存在するが,ヒトやウシなどに下痢を起こすのは,Cryptosporidium par-vumである.経口感染すると腸管粘膜上皮細胞の微絨毛内で無性生殖と有性生殖を繰り返し,激しく増殖する.有性生殖によって形成された4.5~5.4μmのオーシストは下痢のピーク時には,1日にヒトでは10億個,ウシでは100億個も糞便とともに排出され,これが感染源となる2).また,オーシストは発症から40日以上の期間も排出されることがある1).
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