シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編
コリンエステラーゼ欠損症
渡邊 直樹
1
,
浅沼 康一
1
Naoki WATANABE
1
,
Koichi ASANUMA
1
1札幌医科大学医学部附属病院検査部
キーワード:
コリンエステラーゼ
,
遺伝子異常
,
立体構造
Keyword:
コリンエステラーゼ
,
遺伝子異常
,
立体構造
pp.689-692
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903761
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はじめに
コリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase;ChE,EC3.1.1.8)は,分子量約9万の単量体4個からなる糖蛋白で,コリンエステルをコリンと有機酸に加水分解する.肝臓で産生後,糖鎖結合および重合を受け血中に分泌されるため,血清ChE活性は肝臓の代謝機能を反映する.したがって,肝細胞機能が低下する急性肝炎,劇症肝炎,肝硬変,原発性および転移性肝癌で著明な活性低下がみられる.また,肝疾患以外では,有機リン中毒あるいはChE遺伝子の異常により,活性低下ないし無ChE血症となる.
血清ChE活性の測定が臨床上,特に重要な意味を持つのは,本酵素がsuxamethoniumなどの筋弛緩剤を加水分解する作用を有するためである.すなわち,低ないし無ChE血症では,これらの筋弛緩剤投与後に数分~数十分間,あるいは遷延性の無呼吸状態に陥る危険性が高く,あらかじめ異常のないことを確認しておく必要がある1).
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