今月の主題 肥満
話題
肥満の功罪
池田 義雄
1
Yoshio IKEDA
1
1東京慈恵会医科大学健康医学センター健康医学科
キーワード:
生活習慣病
,
内臓脂肪型肥満
,
BMI
Keyword:
生活習慣病
,
内臓脂肪型肥満
,
BMI
pp.444-445
発行日 1998年4月15日
Published Date 1998/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903705
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1.はじめに
300万年以上を経た人類の歴史の中で,遺伝子のしくみは,今日のようにたとえ豊富な食糧が供給され,美食・過食が可能になったからといって,これに順応すべくそう簡単に変化しうるものではない.長い狩猟生活時代を振り返ると,獲物を得たときには腹いっぱい食べてエネルギーを脂肪組織として備蓄する機構と,飢餓状態に置かれたときには備蓄した脂肪組織を分解して上手にエネルギー化する機構とのバランスのうえで,人類は生命活動を長い間維持してきたと言える.
今,この機構すなわち飢餓への対応のしくみが裏目に出て,過剰な体脂肪蓄積者つまり肥満者が出現し,多くの健康障害が引き起こされるに至っている.このようなことからすると,肥満は決して忌み嫌われるべき性質のものでないことが,よく理解できる.すなわち,人が体脂肪を蓄積しうる機能は,人の生存にとって大変な"功"だということである.しかし,人の置かれる環境の激変はこの機能を"罪"深きものとしている.本稿では,肥満が"なぜ罪深いか"について生活習慣病の視点から解説する.
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