今月の主題 骨代謝マーカー
巻頭言
骨代謝異常症と骨代謝マーカー
井上 哲郎
1
Tetsuo INOUE
1
1浜松医科大学整形外科
pp.137-138
発行日 1998年2月15日
Published Date 1998/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903638
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近年のDXA (二重エネルギーX線吸収法)をはじめとした骨塩定量機器の発展により,正確な骨密度の測定が可能となり,骨粗鬆症を含め代謝性骨疾患診療に重要な役割を果たしている.しかし,骨塩量はその時点における骨量を示す静的な数値であり,その時点における動的な情報(骨動態)を知ることはできない.この動的な情報を提供する方法の1つとして,近年骨代謝マーカーの発展には目覚ましいものがある.この動的な情報を提供する方法には,ほかに骨生検やcalcium kineticsがあるが,それらに比べ骨代謝マーカーは侵襲が小さい,測定が容易である,繰り返し測定できる,再現性が良いなどの利点を持つ.
これまで,古典的な骨代謝マーカーとして臨床的に用いられてきたものに,血清アルカリホスファターゼ,血清酒石酸抵抗性酸ホスファターゼと尿中ヒドロキシプロリンがある.しかし,これらの古典的マーカーは骨への特異性が低い点が問題であった.副甲状腺機能亢進症のような骨代謝が非常に亢進した状態では,これら骨特異性が低いマーカーでも,骨代謝がほかの組織の代謝に比べより大きく亢進しているため,これらのほとんどが骨由来となり,骨代謝を反映することができる.しかし,骨粗鬆症など骨代謝の変化が微少な疾患では,骨特異性や感度の低いマーカーではその変化を捉えるのは困難であった.理想的な骨代謝マーカーは,骨組織に特異的であり,わずかな骨代謝回転をも検出することができるものである.
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