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1.はじめに
多発性骨髄腫は,B細胞の最終分化段階である形質細胞の腫瘍性増殖性疾患であり,モノクローナルな免疫グロブリンの増加,腎機能障害,貧血,骨融解や骨粗鬆症による病的骨折などを特徴とする.悪性リンパ腫をはじめいくつかの造血腫瘍は抗癌剤による化学療法により治癒が期待できるようになった.しかし,骨髄腫においては,25年以上前に導入されたメルファランとプレドニソロンによるMP療法1)以来,種々の組み合わせによる多剤併用療法やインターフェロンα(IFNα)が治療に導入された2)にもかかわらず,平均生存期間は3~4年にとどまっているのが現状である3).通常量のアルキル化剤耐性例および再発例に対してメルファラン大量静注やそのほかの大量化学療法,放射線療法と末梢血幹細胞移植(PBSCT)や自家骨髄移植(Auto-BMT)の併用が行われている.これらの移植療法はHLA適合ドナーが不要で,高齢者まで可能であることから,高齢者に多発するのが特徴のこの疾患にも適応があるが,骨髄中の残存腫瘍細胞の問題があり,PBSCTとAuto-BMTともに従来の化学療法に対する抵抗例や再発例に対しての成績は必ずしもよくない4).同種骨髄移植(Allo-BMT)は移植片対腫瘍反応などにより完治が期待できる治療法である5).しかし,Allo-BMTの適応は55歳までで,しかもHLA適合のドナーが必要であり,高齢者に多発する骨髄腫における適応はきわめて限られている.
一方,近年のサイトカインに関する研究から,インターロイキン6(IL-6)が多発性骨髄腫の病態にかかわっていることが明らかとなった.そこで,IL-6のシグナルを阻害することによる治療が考案され応用されつつある.本稿では,多発性骨髄腫の病態を踏まえた新しい治療的アプローチについて解説する.
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