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はじめに
眼に視覚刺激を与えたときに網膜,大脳,脳幹に生じる反応を視覚誘発電位(visual evoked potentials;VEP)と呼ぶ.広義のVEPに含まれるものとして,①網膜電図(electroretinogram;ERG),②短潜時のoscillatory VEP,③大脳視覚野の反応である狭義のVEP,④図形・文字などの視覚的認知課題に対する反応である視覚性事象関連電位(visual event-related potentials,visual ERP)が挙げられる.このうち,臨床応用上の価値がほぼ確立されているものとしては,フラッシュ刺激やパターンリバーサル刺激によるERG・VEPが知られており,その検査法ガイドラインは米国脳波学会(1984年)と日本脳波筋電図学会(1985年,1997年)から出されている1).
視覚誘発電位領域の進歩を考える時に忘れられない5つの重要なエポックがある.第1は1950年前後に平均加算法が導入され,背景活動脳波から微小な誘発電位信号を選択的に抽出する画期的な方法が誕生したことである.第2は1960年代になりパターンリバーサル刺激という新しい視覚刺激法が開発され,フラッシュ刺激によるVEPよりもはるかに安定したパターンVEPがこの領域のルネッサンスをもたらしたことである.第3は1980年代になり,Ganzfeld ERGとパターンERGが詳細に研究され,ERGが視覚誘発電位検査の重要なパートを占めるに至ったことである.第4は1990年代になり,事象関連電位研究の隆盛に並行して,図形や文字刺激によるvisual ERPが注目されたことである.第5は近年の機能的MRI,脳磁図,ポジトロンCT,双極子追跡法,脳トポグラフィーなどの新技術の参入により,視覚誘発電位の起源や分布に関して新しい知識が得られつつあることである.
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