特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓症の検査
2.血液凝固系の検査
2) AT Ⅲ
新谷 憲治
1
Kenji NIIYA
1
1富山医科薬科大学医学部臨床検査医学
pp.105-108
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903091
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測定の意義
AT Ⅲ(アンチトロンビンⅢ)は,セリンプロテアーゼ・インヒビター(serpin)ファミリー1)の一員で,血液凝固因子のトロンビンをはじめ,活性化第X因子や第IX因子などのを不活化して,血液凝固反応を制御する重要な血液凝固阻止因子である.AT Ⅲはヘパリンに結合する性質を有し,ヘパリンに結合したAT Ⅲの抗トロンビン作用は,約1,000倍にもスピードアップされる(progressive inhibitorからimmediate inn-hibitor)となる2).血中には,AT Ⅲと同様ヘパリンに結合して,その抗トロンビン活性を増強する因子heparin cofactor Ⅱ(HC Ⅱ)が存在する3)が,その因子と血栓症との因果関係は明らかでない.一方,先天性AT Ⅲ欠損症,分子異常症では,深部静脈血栓症などの血栓症が多発する.先天性AT-Ⅲ欠乏症は,AT Ⅲ分子そのものが減少する,タイプIとAT Ⅲ分子は存在するが,その分子の構造異常により抗トロンビン活性が低下するタイプⅡに大別される.AT Ⅲのヘパリン結合部位とトロンビンとの反応部位が,分子構造上離れているので,タイプⅡは,AT-Ⅲ分子のトロンビンとの反応部位の異常を示すもの(Ⅱ RS)とヘパリンとの結合部位の異常を示すもの(Ⅱ HBS)に分けられる.
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