特集 血栓症と血小板凝固線溶系検査
血栓症の検査
1.血小板の検査
4)粘着能
冨山 佳昭
1
Yoshiaki TOMIYAMA
1
1大阪大学医学部第二内科
pp.75-76
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903082
- 有料閲覧
- 文献概要
はじめに
血管が障害を受けると,血小板は速やかに障害部分に露出した血管内皮下組織に粘着する.さらに粘着した血小板を基盤として血小板同士が凝集塊を形成し止血血栓となる1).この過程は生理的な止血血栓に限らず病的血栓形成にもあてはめて考えることができる.心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる動脈の病的血栓が血小板主体の白色血栓であることから,血小板の重要性が容易に理解されるが,これらの病態では動脈硬化による粥腫(プラーク)の破綻が病的血栓に至る引き金と考えられる.血管内皮下組織にはコラーゲン,フィブロネクチン,ラミニンなどが存在しているが,特にコラーゲンと血小板との直接的な粘着およびフィブロネクチンやvon Willebrand因子を介した間接的な粘着は止血血栓形成に重要と考えられている2).さらに近年,動脈硬化巣においてはコラーゲンのタイプIおよびタイプIIIが増加していること,およびこの増加が病的血栓形成と密接に関係していることが示された3).このように,血管内皮下組織と血小板との粘着を解析することは血栓形成過程の解明に必須であると考えられる.
前述の血小板停滞率は,ガラスビーズという非生理的な物質と血小板との粘着能と凝集能を全体として観察しているスクリーニングの検査法であり,異常値が観察されても,その原因を特定するのは困難である.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.