コーヒーブレイク
哲学の小道
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.644
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902933
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京都には心を惹きつけられる名所旧蹟が数えきれない.毎年訪れても一生かかっても廻れないであろう.しかし訪れる客にもまた地元の人にも愛されているのは,若王子社から疏水の流れに沿って銀閣寺までの2キロ程の散歩道一通称哲学の道―である.有名な哲学者西田幾太郎にちなんで名付けられたのであろうが,京都で学んだ人にとっては青春の散歩道でもあったのであろう.近くの吉田山にある旧制三高の寮歌"紅萌ゆる"の碑と共に静かな感慨を与える.
こうした哲学の道はしかし京都ばかりでなく人の住む街にはその気になればどこにでも見出せるということを何時からか感ずるようになった.特に喧騒な都会を訪れても,一歩傍らに入ると人の群れない静かな思索溢れる小道があり,それを見つけるのも一つの楽しみになった.それでは自分の住んでいる町,新潟市ではどこであろうか.最近になって漸く心の拠り所を求めようとしている市民にとってこれが該当するのではないかと考えられる道筋に気付いた.地元民に白山様と呼ばれている鎮守白山神社から下もの方に数キロに亘って諸寺佛閣の立ち並んでいる西堀通りである.この寺々の門前の立看板を読みながら歩く時,繁忙の日常の中で人は哲学する一刻をもつであろう.
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