今月の主題 心筋梗塞の生化学的マーカー
心筋(細胞)逸脱酵素の臨床検査〔各論〕
m-AST/s-AST比
米田 孝司
1
,
片山 善章
1
Kouji YONEDA
1
,
Yoshiaki KATAYAMA
1
1国立循環器病センター臨床検査部
キーワード:
早期診断
,
再灌流療法の効果判定
,
重症度
Keyword:
早期診断
,
再灌流療法の効果判定
,
重症度
pp.531-537
発行日 1996年5月15日
Published Date 1996/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902908
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
AST(またはGOT)アイソザイムは,組織傷害により大部分s-ASTが血中に出現し,組織構造が著しく破壊されるとm-ASTが流出する.したがって,ASTアイソザイムによる急性心筋梗塞(AMI)時の臨床的意義は,発症後数日経過した遅い段階で判断する重症度の程度や予後の判定に関する報告が多く,発作後数時間内の初期段階における報告は少ないのでAMIにおける意義を報告する.AMI発症後のm-AST/s-AST比の経時的変化は,他の心筋マーカー(ミオグロビンなど)よりも早い時間(発作後3±2時間)に最高値(41±19%)を示し24時間以内に減少した.また,入院時すでにピークを示すものもあり心筋壊死を伴わない単なる虚血状態でもm-AST/s-AST比が増加する可能性がある.さらに,m-AST/s-AST比の遊出動態(減少率)から再灌流療法の成否判定は可能である.また,m-AST/s-AST比の算出には特別な装置を必要とせず簡便かつ迅速に測定が可能なため,従来から報告されているAMIの予後および重症度だけでなく,早期診断や再灌流療法の成否判定としても有用である.〔臨床検査 40:531-537,1996〕
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.