今月の表紙 臨床細菌検査―形態と集落の観察
Pasteurella multocida
猪狩 淳
1
1順天堂大学医学部臨床病理学教室
pp.496-497
発行日 1995年5月15日
Published Date 1995/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902458
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Pasteurella属には数種の菌種が含まれているが,そのなかでも最も一般的であり,臨床的に意義があるのはPasteurellamultocidaである.本菌はネコやイヌなどのペット動物や野生動物,鳥類の気道,口腔,消化管に常在している.もともとは動物の感染症の原因菌であるが,ヒトにも感染を起こす.ヒトではネコやイヌに咬まれたり,引っかかれたりしたときに創傷感染を起こし,時には本菌を吸い込んで呼吸器感染を起こすこともある.
ヒトにおける感染症は,ネコやイヌからの咬傷,引っかき傷から感染する局所の創傷感染が最も多い.症状は局所の紅斑,熱感,疼痛,膿汁排出であり,時に膿瘍を形成したり,腱鞘炎,関節炎,骨髄炎を合併する.副鼻腔炎,気管支炎,肺炎,膿胸などの呼吸器感染は呼吸器系に基礎疾患を持つヒトにみられ,易感染性患者(compromis-ed host)には菌血症,髄膜炎,脳膿瘍などの全身性感染を起こす.いわゆる日和見感染菌である.本菌による感染症(パスツレラ症)は,猫引っかき病とともにペットなどにかかわる創傷感染症として注目すべきであろう.
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