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スペクトリン
漆谷 徹郎
1
,
長尾 拓
1
1東京大学薬学部毒性薬理学教室
キーワード:
スペクトリン
,
細胞骨格
,
カルパイン
,
機能ドメイン
,
神経細胞死
Keyword:
スペクトリン
,
細胞骨格
,
カルパイン
,
機能ドメイン
,
神経細胞死
pp.355-357
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902418
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赤血球を溶血させて作る膜標品(赤血球ゴースト)をSDS―ポリアクリルアミド電気泳動すると,構成蛋白が分子量に従って並ぶが,同定が進むまではこれらは順に,バンド1,2,3と呼ばれていた.スペクトリンは2つのサブユニットα・βから成り,それぞれバンド1と2に対応する.その名は,ゴースト(幽霊)を意味する"specter"にちなんでつけられたが,後に赤血球以外にも類似蛋白(ホドリンあるいはカルスペクチンと呼ばれる)が発見され,細胞膜裏打ち構造を担う普遍的な蛋白であることが明らかとなった.
スペクトリンは分子量240kDaのα鎖と220kDaのβ鎖のヘテロマーである.αとβの構造は似ていて,106個のアミノ酸から成る繰り返し構造(スペクトリンリピート)がαでは20~22個,βでは17個つながっており,α,βがより合わさった紐を形成し,それが2つくっついて約200nmの細長い紐となる.この四量体が他の細胞骨格蛋白や膜蛋白と相互作用する様を図1にまとめた.図1は,1つのスペクトリンを中心に一次元的に示したもので,実際は各結合部位から放射状に編み目構造が広がっている1).ちなみに,デュシェンヌ型筋ジストロフィーの欠損蛋白として見いだされたジストロフィンは同族蛋白で,24個のスペクトリンリピートを持ち,骨格筋において類似の機構で細胞骨格と膜蛋白を架橋している1).
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