今月の主題 糖鎖の異常
話題
糖鎖生物学
鈴木 明身
1
Akemi SUZUKI
1
1東京都臨床医学総合研究所生体膜研究部部門
キーワード:
糖鎖生物学
,
N―グリコリルノイラミン酸
Keyword:
糖鎖生物学
,
N―グリコリルノイラミン酸
pp.95-97
発行日 1995年1月15日
Published Date 1995/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542902344
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1.ことばの意味
"糖鎖生物学"ということばは最近作られたもので,対応する英語はglycobiology1)である.glycoということばには鎖を意味する概念はない.glycoの語源はギリシャ語でsweetを意味する.糖鎖ということばが考案されたのは,これまで行われてきた糖質,複合糖質の研究から脱して,新しい視点で研究を促進させようとする意欲による.
糖質というと,エネルギー代謝にかかわるグルコースやエネルギーの貯蔵物質としてのグリコーゲンが思い浮かぶ.複合糖質というと蛋白や脂質に結合して存在し,物理的空間を占める物質というイメージがある.しかし,そこには糖の作り出す構造が生物の利用するシグナル伝達の媒体として機能する側面が浮かび上がってこない.糖鎖という言葉が新鮮味を帯びて受け止められるのは,糖の持つ構造が特異的に認識され,機能する重要性が多くの人々によって理解され始めたことによるといえる.
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